2010年09月17日

テニス仲間の葬儀によせて

 30年近くもテニスを続けてきたコジューローが、テニスに行かなくなってもう1年以上が経ちます。それまで何があってもテニスだけは続けてきたコジューローですが、行かなくなった原因は、テニスをするたびに右手首を故障するようになったからです。一度故障すると歳のせいか治るのにも時がかかり、ギターの演奏にも差し障りが生じてしまうようになりました。テニスに対する情熱も若い頃ほどなくなった今、テニスコートへの足も遠のき、現在は全くやめてしまった状態です。
 そのテニスの仲間から9月12日、訃報が届きました。コジューローがテニスをしていたのは、WF会という自分達で作ったテニス同好会ですが、その会のまとめ役をなさっているOさんの奥様、Yさんが亡くなられたという知らせでした。 

 Oさん、Yさんともコジューローはご結婚前からテニスを通じて親しくさせて頂いてましたし、またOさんは当時コジューローの上司でもありました。Oさんはコジューローより年上ですが、Yさんはコジューローより年下で、YさんはOさんと10歳も離れた若い奥様でした。その若い奥様のYさんが癌で亡くなったと言うのです。最初に知らせを受けたとき、コジューローは耳を疑いました、と言うより、えっ?誰のことを言っているの?と、にわかには信じられませんでした。というのは、コジューローがテニスをやめる少し前まで、YさんともWF会でテニスをしていたように思うからです。闘病していることさえ知りませんでした。

 一報を受けた翌日の晩、Oさんから直接電話で知らせがありました。15日通夜、16日告別式とのこと(既にその知らせは受けて知っていましたが‥)。お悔やみを述べ、両方に出席することを伝えました。
 14日(火)晩、ちょうど藤沢でギターアンサンブル「つばさ」の練習中でしたが、Oさん(もちろん喪主です)から携帯に電話がかかってきました。練習中ではありましたが、「つばさ」メンバーに失礼して出させてもらいました。
 Oさんが言うには、お通夜の席でコジューローのギターの演奏を頼みたいとのことでした。え?お通夜にギター演奏?‥コジューローはその場でイメージが出来ませんでした。しかも明日だし、曲はどうするか、弾ける曲があるか‥と、くるくるっと頭を廻らせましたが、何にしてもこの事態でOさんからの頼みですから聞かないわけにはいきません。「わかりました。何とかします。」と受けてしまいました。

 「つばさ」練習を終え、家に帰り、選曲を考えました。まいった何を弾くか‥。兎に角明日なんだから、楽譜を見ながらでも弾ける曲じゃなけりゃいかんし‥、まあ出来そうなのは春くらいまでボランティア演奏用に練習していたポピュラー曲の何曲かだけど、このところサボっていて練習していないからなあ‥。
 いろいろ悩んだ末、昨年姪の結婚式で弾いた「あなたゆえ」「アンチェインドメロディー」の2曲を弾くことにしました。結婚式とお葬式という全く真逆の設定ですが、人生の重大な出来事にふさわしい曲というのは、同じようなものになるのかも知れません。
 そしてもう1曲、これは電話の後すぐに思いついていたのですが、以前Yさんが一番好きだと言っていた曲「岬めぐり」です。
 持ち時間など聞いていなかったので、どのくらい弾けばよいのかも解らないので、とりあえずこの3曲を弾くことにして、さらに数曲の楽譜だけは持っていくことにしました。

 翌日(お通夜当日)、昼間少し練習しましたが、満足のいく演奏が出来そうにはありませんでした。まあ緊急事態なので間に合わせで行くしか仕方がありません。それよりも失敗してしまったことがあります。右手薬指の爪を削り過ぎてしまいました。日頃のプライムギターの練習を怠っているので、爪が伸び放題になっています。練習前に先ず爪を整える必要があり、荒ヤスリでせっせと削って仕上げヤスリで一生懸命磨いて、ギターを持って鳴らしてみたら、ありゃ!しまった薬指削りすぎている。音が薄い。
 まあ本番当日に荒ヤスリで無造作に削ってしまうなんて、どうかしてました。注意不足です。でもやってしまったことは仕方がありません。これでいくしかないのです。

 葬儀は無宗教葬ということで、お坊さんも牧師さんも、もちろん神主さんも居ません。お経もなければ焼香もありません。祭壇もいたってシンプルです。正面中央に棺があって遺影と贈られたお花が両側にあります。
 お通夜の儀は、まず参列者全員で起立黙祷。次に参列者のスピーチが棺に向かってあり、そしてコジューローのギター演奏です。司会の方は演奏ではなく献奏(けんそう)と言っていました。
 儀の始まる前にコジューローは司会の方と少し打合せをしました。先ず演奏用椅子の配置ですが、最初、中央で棺に向かってという配置を示されました。確かに献奏ですからそれが正しいのでしょうが、参列者に完全に背を向ける形になり、なんとも弾き辛い格好ですし、きっとYさんだってそれじゃ恥ずかしいでしょうから、中央から少しずらして横向きに置いてもらうことにしました。演奏者から見ると、Yさんの棺が左斜め前、ご親族の席が正面、参列席が右側という配置です。
 参列者のスピーチが2組終わって、コジューローの献奏の番となりました。しかしまいりました。前のスピーチが沁みて気持ちがズ〜ンと重くなっています。式場についてから練習はおろか指慣らしさえ出来ていません。こんなんで果たして弾けるのか‥。暗い気持ちとこれから始める演奏への不安、頭蓋骨の周りに分厚い雲がかかって、これでもかというくらいテンションが下がりきっています。
 きつ〜!でも弾かねばなりません。準備してもらった椅子の前に、足台、譜面台をセットし、腰掛けてチューニングをします。ギターの音を出して漸く少し気持ちが前向きになったようです。もう少しリラックス出来るように声を出そうとその場で考え、曲目紹介を簡単にしました。
「3曲献奏致します。1曲目は私からYさんへ奉げる曲で”あなたゆえ”、2曲目は生前Yさんが好きだった”岬めぐり”、3曲目は亡くなって幽霊になってももう一度会いたいという皆さんの思いをこめて、映画ゴーストのテーマ曲”アンチェインドメロディー”、この3曲を献奏します。」
この献奏、テニス同好会のWF会を代表してスピーチの変わりにということだったのですが、この時はそれをすっかり忘れていました。1曲目はWF会からとすればよかったと思います。でも司会の方がWF会を代表してと言ってくれてましたので、まあよしとしたいです。
 演奏は1曲目はミスも多く、ちょと酷かったかなと思います。でも多分誰も知らない曲だったと思うので雰囲気だけは感じていただけたかと思います。2曲目は皆さん知っている曲でしたが、演奏も少しマシになってきました。3曲目はサビの頭をミスりましたがまあまあだったかなと思います。でも3曲とも気持ちはしっかり込めて弾きました。この状況では気持ちを込めずにはいられませんよね。
 当たり前ですが、拍手はなしです。棺に向かって礼をし、親族席に礼をし、参列席にお辞儀をして元の参列席へと戻りました。

 その後、喪主のOさんのスピーチがあり、参列者全員で一人ずつ献花をしてお通夜の儀は終了しました。
 久しぶりに会ったWF会の面々とお通夜の食事をしながら時を過ごします。また懐かしい顔ぶれにも沢山会いました。受付前のロビーにはYさんの素敵な作品が展示されています。紙粘土細工とはとても思えない素晴らしい作品群です。楽器をもった動物はとても愛らしく、すこし大降りのバイオリンを弾く女性像は、まるで西洋の彫刻そのものです。それらの表情はとても優しく、Yさんの人柄が表れているようでした。

 翌日、告別式は早めに行って、コジューローも受付のお手伝いをさせて頂きました。WF会の面々は前日もこの日も役員として詰めています。平日とあって、大方の弔問客はお通夜に来たようで、この日は親族の他弔問客はほんの少しでした。
 告別式も、お通夜と同じように黙祷から始まりました。参列者(Yさんの友人)のスピーチがあり、次は娘のAちゃんのスピーチでした。
 Aちゃんはお母さんに語りかけるように、随分と長いこと話していました。でもコジューローも参列者の誰一人もそれが長いとは感じなかったと思います。
 そしてまた一人一人献花を行い、最後に喪主のOさんのスピーチでした。いやスピーチの後献花だったか、ちょっと忘れてしまいましたが、Oさんの最後のスピーチは泣かされました。Aちゃんのスピーチでは必死に堪えていたコジューローですが、Oさんのスピーチでついにハンカチを使わざるを得ませんでした。病気を発見した時から、闘病と家族のことなど、詳しく聞かせて頂きました。抗がん剤が効かないと医師に言われたときのこと。丸山ワクチンの投与が遅れたこと。全てが完璧に対応できたとしても、病気が病気だけにどうなったかはわかりませんが、悔いが残るといったお話でした。

 棺を開けて、一人一人対面のお別れをして花を入れました。斎場から出棺し火葬場へ行ってお骨とともに斎場へ戻りました。
 葬儀はすべて終了しました。そこに居るのは、ご親族の方達のほかは、コジューローを含むWF会の面々だけでしたが、なぜかそこを立ち去りがたい気持ちでした。斎場の方に促されて解散となり、重い足どりで帰路に着きました。


この内容をブログで公開するべきかどうか、少し悩みました。
書いた動機は、お通夜でのギター演奏という特異体験を、このブログの読者に知らせたかったからですが、書いているうちに、命、気持ち、心というものの重みがコジューローにのしかかる‥というのではなく、取り巻くといった感覚でしょうか、そういうものがあって、いいのかな?って気持ちが少し湧いたのです。

葬儀の間、コジューローの心を占めていたのは、Yさんへの追悼の気持ちとOさんとその家族への同情の気持ちです。
が、この記事を書いて気持ちを整理してみると、その他にも3つある事がわかりました。

一つは、お通夜の席でのギター演奏が役にたったのかということ。
結論から言うと、お役に立てたと思います。(コジューローの拙い演奏でも)
傲慢な言い方になっていましたら、その点はご容赦ください。この件につきましては、この記事を書く動機でもありましたから、少し述べておきます。
 楽器の中でもギターほど演奏する人の心がストレートに表現されてしまう楽器はないとコジューローは常々思っています。それがギターという楽器の最大の魅力であり、また恐いところでもあります。恐いというのは、演奏者にとって演奏者のその時の感情によってその演奏する曲の表現が変化するということで、演奏者は感情のコントロールをしなければならないという事だからです。すなわち役者がその役を演ずるのと同じです。まあ楽器はすべて多かれ少なかれこういう事があるのでしょうが、ギターはそれが顕著であるということです。ボディーを懐に抱き、弦を直接指ではじくという楽器の性質かも知れません。
 それが、仲間の死という感情コントロールの難しい(コジューローには出来ませんでした。その重苦しい気持ちのまま演奏してしまいました。)状況の中で、いったいどんな演奏になってしまうのか、実際技巧面はメタメタでした。でも内面表現は、そのままで何ら問題のない状況でした。(普通のコンサートではこの内面を作るのが難しい)結果、お通夜の席にふさわしい演奏ができたとすれば、ギターという楽器の性質に助けられてのことだったと思います。
 献奏後、コジューローに声をかけてくれた人から、選曲が良かった。知らない曲だったけど(岬めぐり以外は)お通夜の席によく合っていた。う〜ん、やっぱりこういう席ではギターだなあ。という言葉を頂きました。また喪主のOさんからは、コジューローのギターが良かったと評判になっている、とまあ労をねぎらっての事でしょうが言って頂きました。

二つ目は、無宗教葬というお葬式のありかたです。
 宗教色や一般には訳のわからない儀式色の一切ない実にシンプルなお葬式だけに、自分の心もシンプルで雑念が入らず、素直に自分の中の追悼の心を感じることができました。またスピーチもストレートで気持ちがよく伝わってきました。亡くなった方を自分の気持ちが送り出すという、弔いの原点を見た感じがしました。
 しかし、伝統を無視するというところに、本当にこれで良いのだろうかという思いがコジューローの中にないわけではありません。訳のわからない儀式、迷信を完全否定する勇気はコジューローにはありません。自分が無知であることは否定できないのです。(ソクラテスみたい)
 それを敢然とやってのけるOさんは、やっぱり凄いと思います。

三つ目は、医療のあり方について。
 癌治療という生死をかけた戦いに臨まねばならなくなった患者とその家族に対して、医療現場は本当に最善をつくし、最強の治療作戦を授けているだろうかという問題。
 患者側に悔いが残るのは、作戦の失敗により生存の可能性を減らしたときだろうと思います。それも選択のミスならばまだ諦めが付くかもしれません。しかし知らなかったため選択の余地がなく可能性を減らしたと知ったときは、それは悔しいでしょう。
 具体的に言えば丸山ワクチンの存在です。早い時期から丸山ワクチンの投与を始めれば癌が治った、もしくはもっと生きられた、かどうかはわかりません。確実に効果があるならば認可されているはずですからね。しかし現実にそれによって癌を克服している方もいるわけですから、可能性がないとは言えないでしょう。しかもこのワクチンは他のがん治療とも併用できるといいますし、副作用もないらしい。まあ医者として認可されていない薬を進めることは出来ないのかも知れませんが、その存在を患者側に知らせて、併用するという選択肢を増やしてあげてもばちはあたらなかろうと思いますがどうでしょうかね。それともお医者さんサイドでそれを認めない、認めたくない何かがあるんでしょうか。事は命の問題です。
 何だか、国民と国益をそっちのけで勢力争いを続ける今の政府を思い起こさせます。国が死んだら元も子もないのに‥。
 ちょっと脱線しました。この問題、また機会がありましたら取り上げてみようと思います。


迷いましたが、Yさんの追悼の意味を込めて、この記事謹んでUPさせて頂きます。

ご冥福をお祈り申し上げます。

最後までお読みいただきありがとうございました。



kiplan at 23:59│Comments(2)TrackBack(0)clip!▼その他 

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この記事へのコメント

1. Posted by 通りすがり   2012年04月24日 21:14
はじめまして。
たまたま、高木真介先輩を検索していたらコジューローさんのブログに来ました。
ずいぶん前の記事ですが、最後まで読んだのは数年前に癌で亡くなった母を思い出したからです。
「死んだら海に流して。お墓はいらない。」と言われても「お願いだからお墓は作らせて。」と説得し、無宗教葬をしたのでした。
お経も戒名も無し。BGMには母が好きだったシャンソンを流して...。
それが本当に良かったかはわかりません。
でも棺の母は笑っていました。

コジューローさんの心のこもったギターの音色はきっとYさんに届いていたでしょう。

2. Posted by コジューロー   2012年04月25日 00:41
>通りすがり様
コメントありがとうございます。
高木真介さんのお知り合いとのこと、もしかして昨年、湯河原のコンサート会場でお会いしていたなんてことも?
コジューローの拙い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
お母様のご冥福をお祈り致します。

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