2011年09月15日

演奏家のためのインナーゲーム

 昨日、本屋で偶然、あのインナーゲーム理論の W.T.ガルウェイ氏による、演奏家のためのインナーゲームの本を見つけました。
 という事で、今日は書籍の紹介をします。
こころのレッスン
演奏家のための
「こころのレッスン」
あなたの音楽力を100%引き出す方法

 バリー・グリーン
 ティモシー・ガルウェイ
 監訳 辻秀一
  訳 丹野由美子 池田並子
 (音楽の友社)
             

 テニスのティーチングプロだったガルウェイ氏のインナーゲーム理論は、当時、テニスに夢中だったコジューローの心をとらえました。そしてこの理論が、あらゆるスポーツの上達に有効であること、いやスポーツに限らず、人間が身体を使って行う、あらゆる行為の上達のために役立つ理論である、と思いました。(現在も思っています。)
 インナーゲームをギターの演奏に生かせないか、常々そう思っていたコジューローですが、やはり世の中に、そのための本が存在していました。この本はギターの本ではなく、音楽家全般、演奏家のために書かれています。

 コジューローが初めてインナーゲーム理論に接したのは、もう30年近くも前になります。テニスを始めて少したった頃で、ちょうどテニスが面白くて仕方がない頃でした。もっともっと上手になりたくて、テニスの上達書も沢山読んでいました。中でも数冊は、当時のコジューローにとって座右の書とでも言えるでしょうか、何度も読み返したものです。その中に、通常の上達ノウハウ本とはちょっと変わった角度から書かれた、テニス上達の為の本がありました。
 通常の上達本の内容は、技術面であれメンタル面であれ、ここはこうしたら良いとか、このようにしたらダメとか、まあそういった類いの事が書かれています。しかし、そのちょっと変わった本は、
「それらの事はもちろん正しい事だが、それを知って理解して、そのように自分に言い聞かせて行ったからといって、そう簡単にそれが出来るようになるとは限らない。むしろそう自分に言い聞かせることで、体が固くなり、増々出来なくなる事が多い。」
‥と述べて、どうするべきか(あるいは、しないべきか)を論ずるよりも、自分自身を規制する強迫的観念から放れて、自然に上達するための心の持ち方(あるいは扱い方)をコーチしてくれる本でした。
 その本の名前は「インナーテニス」です。著者のW.T.ガルウェイ氏が、自身のテニスコーチとしての経験から発見し、発明した上達法に基づく、テニス上達法の本でした。読んで行く中で、実はこの本は続編であることが分かり、読み終えて直ぐ正編も買い求めました。その正編の本の名前こそが、「インナーゲーム」だったのです。もちろんこの本もテニスの上達本です。「インナーゲーム」は理論編、「インナーテニス」は実践編といった感じの内容になっています。
 インナーゲームの理論は、なにもテニスに限った事ではない、と当時のコジューローが感じた通り、「インナーゴルフ」「インナースキー」と、次々とインナーゲーム理論によるテニス以外の上達本が発売されました。コジューローは全て読みました。そして、次は「インナーギター」が出れば良いのになあ、と思いながら時が過ぎて行きました。

 ガルウェイ氏のインナーゲームには、自分自身という一人の人間の中に二人の人物が登場します。
 一人は自分です。自分には感情があり、考えたり悩んだりします。そして自身という一人の人間を支配し、命令を下します。インナーゲームではこの自分をセルフ1と呼んでいます。
 もう一人は自身です。インナーゲームではセルフ2と呼びます。セルフ2には感情はなく、いや本当は感情もあるのだと思いますが、表面には出てきません。表面にはというのは、意識の上にという意味です。ですから無意識とか潜在意識とか呼ぶことも出来るかも知れません。そしてセルフ2はセルフ1の命令に絶対服従の立場にいます。どんなに理不尽な命令や罵倒、罵声すらも一方的に受け入れます。でも、全ての仕事はセルフ2が行います。息をすることから、歩くことも、食べることも、食べたものを消化吸収することも、みなセルフ2の受け持ちです。
 セルフ2の働き無しに、セルフ1は生きることさえ出来ないのです。にもかかわらず、セルフ1はセルフ2をこき使い、ほんの少しでもセルフ1の意図した通りにセルフ2が動かないと、「オレはなんてバカなんだ!」とか「アタシは本当にニブくてトロいのね!」などと罵声を浴びせます。ここで言う「オレ」「アタシ」は、セルフ1がセルフ2に向けて言っているのです。それでもセルフ2は、文句も言わず、反抗もせず、黙々とそれを受け入れ、なんとかセルフ1の意向に沿おうと一所懸命働きます。セルフ2は、何と健気なのでしょう。しかし、こんな理不尽な主従関係が旨くいくはずがありません。セルフ2はセルフ1に叱られて、一生懸命やればやるほど失敗をすることになるのです。
 実はセルフ2は、もの凄い能力の持ち主なのです。ところが、セルフ1はセルフ2のその能力を全く信用していません。それが大きな問題なのです。いや、セルフ1だって無意識の領分ではセルフ2を信頼しているようです。例えば、歩くときにセルフ1が一々「はい、右足踏み出して、次はその右足に体重を移動して、体重移動が終わったら左足を上げて、その左足を前に出して、今度はその左足に体重を移動して‥‥」などと命令していたら、とてもスムーズには歩けません。セルフ1は歩くという意思だけを示して、あとは何も考えずセルフ2に任せているから、スムーズに歩けるのです。無意識はもともとセルフ2の領分ですから、任せる事で旨くいくのです。
 何事も、セルフ1さえ邪魔をしなければ旨くいく、というのがガルウェイ氏の考えです。そしてその方法を示したのがインナーゲームなのです。

 ここで紹介する本”演奏家のための「心のレッスン」あなたの音楽力を100%引き出す方法”は、冒頭に書きました通り、昨日、本屋で見つけました。もちろんその場で買って帰りました。(2400円と少々高かったのですが、インナーゲームの音楽版とあっては見過ごせませんでした。)そんな訳で昨日の今日でコジューローはまだ読んでいません。
 共同執筆者のバリー・グリーン氏(ガルウェイ氏よりも先に名前が書かれているので、グリーン氏が主筆と思われます。)は、シンシナティ交響楽団の首席コントラバス奏者だった方で、現在は大学や学校での個人教授やクラブ運営なども含む、幅広い音楽活動をされているとのこと。音楽家でありながら、ガルウェイ氏のインナーゲーム理論との出会いは「インナースキー」だったそうです。その「インナースキー」のもたらした結果に興奮し、ガルウェイ氏にインナーゲームの音楽版を作りたいと持ちかけました。それから3年、グリーン氏自身の演奏や指導を通じて何千時間にも及ぶ研究と実験を行った後、出来上がったのがこの本だということです。原書「The Inner Game of Music」は、世界中で20万部を超えるベストセラーとなっているようです。
 この日本語訳の第1刷発行日は、2005年6月5日となっています。コジューローが手に入れたのは第15刷ですから、日本でもかなり売れているようです。

 先日のギターアンサンブル「つばさ」の練習で、「意識的に合わせようとしないで、観察して感じること、それだけで体の中の自動調整機能が働いて‥」というようなアドバイスをしたとブログでも書きました。実はこれ、インナーゲーム理論なのです。何十年も経った今でも、コジューローの中にインナーゲームが生きていました。もしかするとこの事が、待ち望んでいた本が世の中に出ている、っていう事をコジューローに知らせてくれるきっかけになったのかも知れません。(オカルト的ですが‥)
 コジューローは今、わくわくしています。待望の書を手にして、これから読み進めていくことが楽しみでなりません。


演奏家のための「こころのレッスン」―あなたの音楽力を100%引き出す方法



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この記事へのコメント

1. Posted by 古賀夏美   2011年09月17日 12:00
このシリーズ、不覚にも全然知りませんでしたこれは大変興味深い考え方ですね自分本体の中に2タイプの自分がいる、というのは演奏(練習を含め)する時に今まで感じていて、それを上手く利用出来ている時って演奏も悪くないように思っていました。
私もこの本ゲットして研究してみます。
いい情報ありがとうございました?

2. Posted by コジューロー   2011年09月19日 01:13
>古賀夏美先生
コメントありがとうございます。
もしかしたら、古賀先生あたりは興味を持たれるかも知れないな、と思いながらこの記事を書いていました。
 今の所1/3くらい読み進めていますが、ガルウェイ氏の文は序文のみで、本文は全てバリー・グリーン氏の文のようです。ガルウェイ氏の書いた「インナーゲーム」では、ガルウェイ氏のレッスンを受けるユニークな生徒が登場し、その会話がユーモアたっぷりで大変楽しく読み易いものでした。でも、こちらの本はそういった愉快な要素はあまりなく、少々固い感じがします。読者ターゲットが、かたやアマチュア愛好家であるのに対し、こちらはプロフェッショナルもしくはそれに準ずる方に向けて書かれているのかも‥いや単にグリーン氏とガルウェイ氏の個性の差とも言えそうですが‥。翻訳文特有の回りくどい言い回しなどもあり、少々読み辛い点もあるのですが、まだ全部を読み切っていませんので、この時点でうかつなコメントはしない方が良いのかも知れません。コジューローとしては、何と言っても題材がインナーゲームであることに信頼と興味を置いています。
 この本が、古賀先生の何らかの参考になるか、お役に立つ事が出来れば嬉しいんですけど‥。


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